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詳細情報追加(2011.06.13)

3HBブロック単体鉛直加重強度試験1
ブロック単体強度試験の写真・解説です。
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3HBブロック単体鉛直加重強度試験2
ブロック単体強度試験の写真・解説です。
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2007年古民家耐震補強(PDFファイル)
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つみっく危機管理サイクル
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避難所女性スタッフのみなさまへ
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結合:ボックスビーム曲げ試験
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BB曲げ試験・成績書・2010年3月
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木材工業原稿Vol.62, No.2, 2007

原稿種別:
内外情報 1)
和文題名:
提案・木造 乾式嵌合(かんごう) ブロック工法による家造り
三島昌彦:
所属機関 (株)つみっく
2)英文題名:
A proposal for house building by new self-build system using the wooden block

社団法人 日本木材加工技術協会 「木材工業」http://www.jwta.or.jp/

はじめに

筆者の住む島根県は高齢化,過疎化がすすみ耕作放棄地や手入れのされない人工林の山地が年々増大している。

一方で都市生活者の田舎暮らし願望はその比率を高めており、
例えば退職後の団塊世代が都会生活を離れ中山間地域での農的生活を目指すとき最初に解決すべきは耕作地と住宅の確保である。

そのときにセルフビルドにより手ごろな大きさの家を建てられるのであれば、経済的でもあるし再スタートにふさわしい達成感も得られる、

ただ、素人がセルフビルドに挑戦しようとする時、従来の軸組み工法やパネル工法、丸木組み工法はいかにも難しそうで二の足を踏むこととなる、

こうした困難さを克服できる新しい工法として、ここに示す木造 乾式嵌合 ブロック工法を約3年前に考案した。

この工法によって,セルフビルドが容易になるのみならず、中山間地域への定住促進および地場産業振興にも寄与すると思われる。 以下に木造 乾式嵌合 ブロック工法の概要を述べたいと思う。

2.求められるセルフビルド工法・システムの条件

ログハウスなどのセルフビルド工法は欧米では比較的一般化しているにもかかわらず,わが国においては欧米ほど普及しているとは言いがたい。
今後セルフビルド工法がより普及するためには以下に示す条件が満足される必要がある。

1.事前の計画
材料の拾い出し,組み立て手順,建築費用見積,各種図面,完成までの必要労働時間,これらの情報が誰にでも簡単に手に入れられるシステムの確立。
2.簡易工法
建設重機はもちろん,ノミ,カンナ,丸鋸なども使わずにインパクトドライバー,スパナ,ドリル等操作が簡単で安全な道具だけで一定性能を満たし改造自由度の高い頑丈な建物が作れること。素人でも理解しやすい工法であり,地震国の建築基準法をクリアし住宅金融公庫の融資も受けられる工法であること。
3.工事期間短縮
短期間で建築可能であること。1日あたりの工事参加人数が10名で,66㎡のセカンドハウス建築を行う場合,躯体完成屋根がけまでを2日間。サッシ取付け,外装工事を2日間。少なくとも5日目からは屋内での作業が可能になること。
4.低価格
同規模の住宅が自らの労賃は別枠として,できうれば一般相場の半額で建築可能であること。すなわち,「小さく建てて,ライフスタイルにあわせて増築」および「小額借入にして短期でローン返済」ができること。
5.プロとの連携
基礎,屋根,設備などの工事をプロに依頼するとき,工事価格の妥当性を判断でき,一定の仕様,品質を担保できるシステムであること。
6.環境への配慮
改良に 今後のエネルギーマテリアル資源の枯渇を想定し,建築材料は国内で調達できるものの比率を高めること。また家屋解体後,リユースできる建材の比率を高めること。

これらの条件を十全に満たす工法・システムがあれば日本でのセルフビルド普及率は飛躍的に上昇し、戸建て住宅の比率も高まることが予想される。

2.木造 乾式嵌合 ブロック工法の概要

本誌読者の多くは子供のころ上部にイボイボを持つプラスティックブロックおもちゃに夢中になった経験をお持ちのはずである。
あのおもちゃのように上下の木質ブロックを互い違いに嵌合させ実際の建築を可能にできないかという発想が工法開発の原点となった。

第1図
第1図、本体ブロックの写真とその寸法図view

ブロックは,間伐材を含むスギ材だけから製造された合板(3プライ,厚さ7 mm)を用い,第1図に示すような形状に製造されたものである。

間伐材の需要喚起を目指し、素人でも容易に建設・解体・移設が可能であるように開発中である。

従来,建築資材の一般的イメージは「重い・かさばる・汚い・加工が難しい」であったが、 今回は強度等の性能を確保した上で「軽い・スリム・きれい・加工は最小限に」を各パーツの開発コンセプトとしている。 ブロックの大きさはレギュラー型で高さが450 mm,幅(壁面の厚み)が100 mm、長さは100 mm刻みで300~900 mmの7種類がある。 したがって構築物は平面において100 mmモジュール設計となる。

ブロックはモジュールあたり72 × 72 mmの角型空洞をもつので壁面は上下に貫通するパイプを内包した構造となる。
このパイプは配線,配管スペースとしても機能し,ボルト鉄筋の通り道にもなる。
この場で「壁面」と言う言葉を用いるが,正確には柱と筋交とを含む耐力壁を想起して頂きたい。

第2図
木製ブロックつみっくを使った住宅組み立ての手順view

このようなブロックを組み立てることによって上図(2図)のような手順で住宅を造ることになるが,その概要について述べる。

組み立て手順

第3図
ブロックを使用した住宅の基礎および土台の概要図view
第4図
ブロックを使用した住宅の屋根およびはりの接合部の概要図view
第5図
ブロックを使用した住宅の屋根およびはりの接合部の概要図view

大まかな組み立て手順は以下から

  1. まず土台には木製の高さ30 mmのベースガイドボスがモジュールごとに配置される(第3図)ブロックの凹部分が嵌(は)まり,固定される。
  2. 土台からはアンカーボルトとは別にブロックを上下方向に緊結するためのボルト鉄筋を設ける。
  3. 互い違いに積層したブロックの最上部には臥梁に相当する桁を渡し(第4図)
  4. 前述のボルト鉄筋で各ブロックを締め付け大面積の壁面を構築する(第5図)
  5. 緊結することで細胞のようなブロックから一体型の大きな壁面をつくれるので,この工法を「WallCell工法」と名付けた。

1820 × 910 mmの合板1枚から長さ500 mmのレギュラーブロック1個ができ,スギ合板なので重量が比較的に軽く,このサイズでほぼ5 kg,モジュールあたりの設計重量は1 kgとなる。

第6図
view

また、第6図に示すように凹凸の嵌合部はそれぞれ1/30勾配のテーパーが付いているために施工が簡易である。

施工の際、この部分には接着剤を用いない(乾式)のでボルト鉄筋のナットをゆるめ,桁を外すとブロックは繰り返し再利用できるし,移設も可能である。

現在、工場の1日1人でブロック12個を生産するにとどまっている状況である。
生産委託をしている工場の仕事の合間で試行錯誤をしながらの開発生産だが、今後本格生産に移行したときにその生産性をどこまで高められるかが製品の価格引下げに反映されてくる。

3.ヴァーチャル建築・設計・見積システム

建築工事を発注された方であれば見積書の分かりにくさに当惑された経験をお持ちであろう。
中でも「○○工事一式」が多用され、その工事内容に占める材料費・人件費・粗利益・経費等が不明確で,工事費用の妥当性を判断できない。

このことも日本人の「建築はプロのもの」という意識を醸成する一因となっている。

またセルフビルドとひとくちに言っても,設備工事を筆頭に基礎工事や危険度の高い屋根工事などは素人には難しいので、専門業者に外注することになる。 これらの点をふまえて,インターネットを用いたヴァーチャル建築システムを開発中である7)。幸い100 mmモジュールブロック工法であることはデジタル処理に向いているので,将来的には次に述べるようなシステムを目指している。

第7図
view

システムは設計部、費用計算部、データベース管理部、立面図・平面図作成部で構成される。
第7図に全体のシステム構成図を示す、具体的にはメーカーの管理するサーバーに登録を終えたユーザーが第2図のようにパソコン3D画面上に建材パーツをマウスのピッキングで積み込み、
架空の建物をシミュレーション建設する。

建材パーツは建築順、アイテムごとに提示されユーザーはその中から必要なパーツを選択する。

パーツにはそれぞれ価格、施工時間、寸法情報などがあらかじめ入力してある。
ヴァーチャル空間に組み込まれた各パーツはそのデータが更新ボタンひとつで演算され大まかな価格・工数見積情報が素人でも入手可能となる。
3次元データからは2次元データも簡単に取り出せるので素人には今まで製図できなかった各種建築図面もプリントアウトでき、これらは各専門業者への工事発注と価格交渉のときにも役立つ。

4.セルフビルド支援システム

ユーザーが実際の建築を行うときには、
サーバー管理者より推薦された地元の設計事務所・工務店(工法代理店)に建築確認申請作業および強度計算を依頼する。

この時点でユーザーは代理店の助言を仰ぎ建築基準法に準拠する仕様に設計を変更する場合もある。

また代理店からは専門工事業者の紹介も受けられる。
サーバー管理者は工事地周辺に住む他のユーザーにBCC等の手段で工事への無償労働参加を呼びかける。

面接の後,施主ユーザーは工事参加者を選定し安全対策、食事、駐車場、傷害保険などを準備する。

代理店の監督下で素人集団が躯体工事・屋根がけ・外装までを一気に完成させる。

一方,無償労働工事参加者はこの工法の建築予備軍と捉えることができる。
彼らにとって工事参加はリアルな経験となり,現場は自らの工事に向けてのいわば「施工実習教室」となる。ここに示した工法を媒介として建築を相互扶助する「結い」のようなコミュニティが全国各地に自然発生することを期待している。

5.今後の課題とまとめ

ブロックの強度試験も昨年から開始したばかりであり7, 8),この工法を普及させるには以下のような課題が山積している。

  1. 素人の成人男性二人が高所作業で安全に取り扱える20 kg以内の軽量長スパンの梁材や屋根下地パネル等,軽量パーツを開発すること。
  2. 素人でも施工性の良い外断熱建材をも兼ねる外装工法の開発および針葉樹レースと相性の良い天然素材系接着剤を開発すること。
  3. 建築基準法に準拠する工法及び建材としての国交省型式認定取得は大きな課題の一つである。建築基準法が規定する木造工法は大きく分けて軸組み工法とパネル工法とである。本工法(法律の想定外の工法)は今後多くの実験データからこの工法が法に定められた基準を満たすことを証明し,設計上の強度を予め算出できる構造計算手順も確立する必要がある。
  4. 乾式の嵌合結合で上下左右のブロックが組み合わされる工法の強度を計算する構造解析シミュレーションプログラムを開発すること。

以上の課題を解決し,この工法が冒頭で述べたセルフビルド普及条件に肉薄するには多大な資金および多数の研究機関と関連企業との開発参加が不可欠である。「レジャーとしての建築」新しい建築文化創出プロジェクトとしてコンソーシアム形成が待たれる。

文献

  1. 三島昌彦:特開平16-278290 (1985)
  2. http://tsumic.com
  3. http://ameblo.jp/wallcell-dandan/archive-200412.html
  4. http://www.iwami.or.jp/sanson/sub7.html
  5. 藤井諭,井上貴裕,大塚正康,福岡久雄,渡部 徹,三島昌彦:情報処理学会DICOMO2005シンポジウム論文集,801-804 (2005)
  6. 藤原研哉,山本明日加,竹岡元宏,瀬尾隆史,稲田祐二:日本建築学会中国支部研究報告,29, 81-84 (2006)
  7. 稲田祐二:日本建築学会大会学術講演梗概集,C-1, 255-256 (2006)