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WallCellにこめた願い

WallCell工法のはじまり

開発者の住む島根県では高齢化,過疎化がすすみ耕作放棄地や手入れのされない人工林の山地が年々増大しています。
一方で都市生活者の田舎暮らし願望はその比率を高めています。例えば退職後の団塊世代が都会生活を離れ中山間地域での農的生活を目指すとき最初に解決すべきは耕作地と住宅の確保です。

そのときにセルフビルドにより手ごろな大きさの家を建てられるのであれば,経済的でもあるし,再スタートにふさわしい達成感も得られます。

ただ,素人がセルフビルドに挑戦しようとする時,従来の 軸組み工法 やパネル工法・丸木組み工法はいかにも難しそうで,二の足を踏んでしまいます。こうした困難さを克服できる新しい工法として,ここに示す 木造乾式嵌合(かんごう) (かんしきかんごう)ブロック工法を約3年前に考案しました。

この工法によって,セルフビルドが容易になるのみならず,中山間地域への定住促進および地場産業振興にも寄与すると思われます。

以前より中山間地域の活性化問題に取組む中で二つのことをライフワークに出来ないかと模索を続けています。

  • 林業及び周辺産業を育てること
  • そしてその地に新しく定住する人々が住む家を安価に提供すること

この二点です。

そのような中、素人が自ら家を建てるための木質ブロックを考案し、2004年末多くの方のご協力のもと試験的に10㎡弱の実証棟を建てるに至りました。 従来の柱梁等の構造材以外に壁面、屋根パネル、床材にまで杉の用途を広げる建築工法です。

セルフビルド工法を広める

「今の日本にセルフビルドを根付かせると言うのは土台無理な話だよ、ムリムリ。」

これは建築の業界に身を置く方々よりアドバイスを頂いた時、何度も聞かされた言葉です。本当にそうでしょうか?

  1. 開発中の見積設計ソフトの精度が高まり、材料の拾い出し、組み立て手順、正確な見積明細、詳細な各種図面、必要労働時間数、これらの情報が誰にでも無料で手に入れられるようになったなら。入力方法はパソコン3D画面上に架空の建物をゲーム感覚でシミュレーション建設しさえすればOK
  2. 建設重機はもちろんノミ、カンナ、グラインダー、できれば丸鋸なども使わずにインパクトドライバー、スパナ、ゴムハンマー等 操作が簡単で安全な道具だけで一定性能を満たし改造自由度の高い頑丈な住宅が作れるようになったなら。
  3. 同規模の住宅が自らの労賃は別枠として、一般相場の半額で建築可能になったなら

全部「たら、れば。」の話です。

しかし、もしこれらが実現すると多くの日本人の中に潜在的に眠っている「ものづくりDNA」に火が付くと小生睨んでおります。

WallCell工法の情報が行き渡ったときにはマイホーム着工数の20軒に1軒程度はニーズがあるのではと自分勝手に予想しています。

建築が最高のレジャーになる

上記の1~3が実現しても実際の家造りには諸々の困難があるはずです。 それらを克服して自らが住む「生活の器」を自らの力で完成できた時の喜び。 庶民がおおきな達成感を得がたい現代日本において、建築は私たちにとって最高のレジャーとなりうるのでは?

今後本格的にこの工法を世の中に普及させるためにはまだ問題が山積しています。 建設重機を用いず素人による工事を可能にするため、軽量長スパンの梁材の開発等、すべてのパーツを高所作業で取り扱える25Kg以内の重量に抑える必要があります。

素人が施工しやすい外断熱建材をも兼ねる外壁パネルの開発も待たれます。
無料で頒布される見積もり設計シミュレーションプログラムもまだその開発が緒に就いたばかりです。
シックハウス症候群を引き起こさない針葉樹と相性の良い接着剤の開発も急務です。

新しい工法で建築を可能にするためには国交省の型式認定を受けねばなりません。 多くの実験データからこの工法が法に定められた基準を満たすことを証明し、設計上の強度が予め算出できるよう構造計算式も確立する必要があります。

WallCell工法は従来の木造軸組み構造よりも組積造(コンクリートブロックやレンガ造等)にちかい工法です。専門的な言葉で申し訳ありませんが、乾式の嵌合(かんごう)結合で上下左右個々のブロックが組み合わされる工法は世界的にも前例がありません。 WallCell工法における構造解析シミュレーションプログラムの開発は新しい学問分野です。 コストと時間のかかる作業になります。

もっともこれはWallCellブロック100%で構造躯体を作る場合の話で、あらかじめ鉄パイプや木柱で法的構造を確保した後、壁面材料としてWallCellを用い建築を行うことは現行法上でも充分に可能ですし、従来の工法より格段に素人による工事に向いています。 これらの課題は課題として取り組みつつ、同時並行で仮設店舗、スケルトンマンションの間仕切り、店舗の内装や陳列ボードなど構造躯体以外への活用が出来ないかと考えています。

国産木材の活用を進める

50年前、日本では木材自給率が97,5%であったのに比し平成16年の自給率は17%をも割込む程に低下しているようです。この半世紀、経済性を最優先させる日本社会は住宅建築木材や建材の多くを海外木材に依存してきました。その廉価性と量確保の簡便さと円高が原因です。

このあり方に対抗できる有為な国産木材消費振興策が見出せず現状に至っています。

いよいよ京都議定書が発効され、国産木材の有効活用による二酸化炭素の固定化と新たな森林資源育成による吸収・貯蔵に関する具体的方策は避けて通れない課題となりつつあります。

環境や国内林業も大切、さりとて経済性は無視できない私たちがそれらを両立させつつ住宅を手に入れる方法が望まれます。 この相反する二つの課題をともに解決するにあたって、その方策を既存建築技術やシステムに求めるには限界があるように思います。

国産木材を大量消費するためにはセルフビルドにより工事費を圧縮し、木材材料価格の負荷 (現時点ではまだ国産木材は海外産に比べて割高です。)を相殺させます。

そして、レジャーとしてWallCell工法をその楽しさで演出し、住宅取得価格の明朗会計システムにより消費者の納得を頂き、その建築ニーズを掴みます。

インターネットのフル活用とマスコミでの話題性、そして何よりもWallCell建築経験者たちによる口コミによる事業拡大で営業経費を抑えられれば半額住宅は決して夢ではありません。

合板を利用する事で従来建築材として敬遠されてきた節の多い間伐材などB級木材も有効活用できます。

日本の林業が住宅生産者(設計者、ハウスメーカー、工務店、大工)との連携も踏まえつつ、さらに踏み込んで住宅を取得する消費者とダイレクトに連携するための太いパイプとしてWallCell工法が育ってほしいと願っています。 向こう100年に渡って森林の多様な機能を持続的に発揮させて行くためには、今ここで半世紀前に植林された杉檜を大量に消費し、その後に間伐、長伐期化、広葉樹の導入等の多様な森林開発・改造を図ることが望まれます。

楽しい家づくり文化を

小生の願いは日本中のお父さん達(小さいときに一度はブロックで遊んでいたはずです。)に日本の木材で家を手作りして頂き、子供たちにとって物作りの現場を身近にし、その楽しさを大人と共に体験してもらうことです。

それまで世の中に存在していなかったものを仲間と作り上げることは快感です。

その達成感を親子で味わった子供時代の成功体験は今世紀の日本人に最も求められるチャレンジする心を育てるはずです。 この住宅建設システムを全国に広め、規格を統一し、地域それぞれの資本を持ち寄り生産販売拠点がいくつもでき、林業を核とした新産業があちこちに生まれる事が小生の夢です。

車のタイヤ交換が出来る人ならだれでも完成できる住宅建築システムの誕生に何卒有益なご助言を賜りたく存じます。 身近な山々にこれだけ大量に杉檜を抱える国は日本だけだと思います。

これらの緑がクマ、イノシシ問題や花粉症などで嫌われることなく、経済社会のなかで役立つためのシステム造り、皆様からのご協力と応援どうぞ宜しくお願い申し上げます。

代表取締役 三島昌彦